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  • 三宅 玲子

病院で。



 20年ぶりぐらいに入院する羽目になったこの数日。

 と言ってもただベッドで痛みをやり過ごすだけの療養生活だったのですが、面白いなと思ったのは看護師さんの仕事。朝、昼、夕と規則正しくやってきては血圧、体温、酸素?を計測して、記録して、体調確認してメモをして。記録を積み上げて体調管理のデータにするって当たり前といえば当たり前ですが、取材の仕事と一緒だなと思ったんですよね。あんなに几帳面に細かく記録できていない自分の仕事を反省です。自分はといえば、痛みの渦中にあった日など、後でメモを取ろうとしても何時にどの薬を飲んだかもうろ覚えな始末。一に記録、二に記録、記録を積み上げて振り返って検討する、記録こそ仕事の基本だなと看護師さんに思い出さされたような気持ちがします。


 同じ仕事をしていても看護師さんによって違う味わいで伝わってくるのも面白いことでした。声優みたいにハリのある上手な話し方で声がけする看護師さんもいれば、ボソッと愛想なしのお嬢さんもいるけれど、愛想なしさんが案外親切だったりして、人は見た目ではわかりませんね。

 ただ、話し方が上手い看護師さんは「どう言えば伝わるか」、語尾のトーンまでよく考えている(もしかしたら感覚的にそうできる)ような感じはしました。仕事が上手いなと思いました。

 それぞれに個性はありながら、投げやりな冷たい感じのする看護師さんは1人もいなくて、チームの見ている方角がある程度揃っているのかなと想像しました。


 ベテランのがん患者が多いフロアで、抗がん剤治療など負担のかかる治療に耐えている方達でした。病気の人と関わるお仕事は健康でないとできないですね。弱っていたので余計に看護師さんが強靭な人たちに見えて眩しく頼もしかった。


 休日は少ない人数でのシフトで忙しそうでした。「ヘルパーさんがお休みだから仕事が回らないんです。ヘルパーさんにすっごく助けてもらってるんですよ」という看護師さんの言葉を実感したのは退院する帰り際でした。荷物をタクシー乗り場までカートで運んでくださるヘルパーさんと言葉を交わすと、この病院は働きやすいんですよとおっしゃいます。看護師さんがヘルパーを見下すことなく尊重して大事にしてくれると。聞けば、この病院でも以前は難しい問題もあったそうですが、それを改革するために、優しい(とは抽象的だけど)看護師さんがリーダーに立つように組織改革があったんだとか。相手を尊重して大切にする人が人をつないでチームにまとめていけるんだというお話。


 ヘルパーさんはシニアでした。66歳とおっしゃったでしょうか。以前は在日外国人のスポーツ団体で外国人のサポートをするお仕事をしていたのがコロナ禍で職を失い、初めて医療職のヘルパーの資格を取って働き始めたといいます。慣れない仕事だとおっしゃっていました。いやな思いや悔しいことはたくさんあるでしょうに、不満は言葉にせず、新しい場所で静かに仕事をしていく姿に、連帯と発奮を覚えた退院のひとコマでした。小柄な背筋を伸ばされて美しい日本語を話す方でした。人生、わからないけど元気で働いていきたいですね。