熊本市の慈恵病院が内密出産希望の女性を受け入れ、無事に出産後、女性が自分で育てることを決心するまでの1ヶ月ドキュメントを文春オンラインに寄稿しました。
起案したのは内密出産が回避されたことを慈恵病院が発表した日の夜でした。前日から偶然熊本に取材に出向いていて、刻々と変化する状況を院内外で傍観していました。事態がひとつ動くごとに院長の蓮田医師や相談員からぽろりとこぼれる短い言葉に、この問題がどれほど病院にとっても重圧のかかったことかが察せられ、このドキュメントを記録できたらと思いました。内密出産という遠いところで起きている出来事を想像する助けになるかもしれないと思いました。
幸運だったのは、起案より前に精神科医・興野康也医師に取材できていたことです。
精神科医の立場から地域医療に携わる興野医師に、産む性と心の関わりについてインタビューをしたのですが、興野医師はゆりかごに預け入れる女性たちには特定妊婦と近いバックグラウンドがあるのではないかと指摘もしています。
興野医師がゆりかごの問題に新しい視点を当てて解釈してくださったおかげで、かなり見える景色がクリアになってきました。
本稿では興野医師の視点を詳しく紹介できたことが幸運でした。
今回内密出産を回避した女性は知的発達症の診断を受けていますが、知的障害や精神障害の有無にかかわらず、出産と心の関わりは女性にとって産んだ後の人生にずっとついて回る大切なこと。そこに精神科医の伴走は欠かせないものと思います。
興野医師のいらっしゃる人吉までの車窓からの景色は山々が深く色づき美しかったです。
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