ある女性が内密出産を撤回してひとりで育てていた赤ちゃんを児相に託すことになったのですが、もしショートステイを利用できていたら追い込まれずにすんだのではないか、そう思ったことから、こどものショートステイの仕組みについて考えています。
ショートステイ事業は子ども・子育て家庭支援法のもとに行われる子育て短期支援事業のひとつで、民間会社の調査によると、人口30万人以上の行政市では100パーセント整備されているそうです。現在のところ乳児院や児童養護施設などが受託して運営しています。
病気や育児疲れなどで子どものお世話ができないときに1回につき7日までお泊まりでお預かりをしてもらえますが、不幸なことに女性の暮らす自治体では0歳児のショートステイがありませんでした。
どんな支援が必要だったのか、また、その後1年以上、児相が母子分離状態を継続したのはなぜだったのかを取材した際、母親支援の不足が痛感されました。
https://dot.asahi.com/aera/2022120700021.html
母子保健を専門とする小児精神科医鷲山拓男氏は「子どもの虐待は地域社会の責任」と述べています。その通りだと思います。 今後子どもがおうちに帰ることができたとき、ショートステイは母子の生活を支えるための重要なプログラムになるかと思います。この親子に限らず、育児が孤立しがちないま、親が追い詰められてストレスが子どもに向かうのを防ぐ、有効な手立てだと思います。
でも。親にとって身近な選択肢というにはまだ知られていませんし、受け入れ数も限られています。 福岡ではどろんこ保育園の天久薫理事長がショートステイ事業の検討を始めていて、思わず拍手しました。
なぜ天久理事長がショートステイを発想するかといえば、それはやはり、夜働く母たちの苦闘を50年近く至近距離で見ているからに尽きます。
ショートステイが保育園にも広がれば、もっと抵抗感少なく保護者が利用できるようになるでしょう。
ショートステイで認められる要件に「レスパイト」があります。レスパイトとは、親が育児疲れで限界となって子どもにストレスが向けられることを防ぐこと。もっといえば、理由を問わず預けられるのがほんとうの意味でのレスパイトではないかなと思います。
どの子どもも年に何日かのショートステイをルールづけるのはどうかというアイデアが霞ヶ関の友人から飛び出しました。
そうすれば親は呵責なくショートステイを利用することができるし、見つけにくい虐待の観察・発見も可能になる、今後到来する保育園あまりの時代に空き施設の活用もできるよね、と。子どもを社会で育てるという抽象性を具体に変えていく妙案だと思いました。
「ショートステイは親のためだけでなく、育児に疲れた親から子どもが心身に暴力を受けずにすむための、子どもを守る防波堤でもある」と天久理事長は言います。
子どもの権利を考えるときにも大事な仕組みなんですと。
子育てを家の外に開いていく試みが広がることを願います。
(写真はどろんこ保育園屋上に茂る桜の木/ 22年秋)
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